診療所開設届
診療所の開設届とは
医師が診療所を開設した場合には、都道府県知事(保険所長)へ診療所 開設届出を提出することが必要になります。
これは、「診療所を開設しましたので、そのお知らせをお届けします」という性格のものなので、報告的届出とも言われます。
そして、診療所を開設した後に届出をすることから、「近い将来診療所を開設します」という未来の開設届出というのは、お役所に持って行っても受け付けてもらえません。
つまり、「診療所を開設してから持ってきてください」と言われてしまいます。
そのため、「9月1日に診療所を開設しましたので、そのお知らせをお届けします」という届出書を9月2日以降にお役所に持って行くという感じになります。
無床診療所の診療所開設届出を受け付けるための要件
医療法施行規則上は、ほとんど要件がありません。
- 常勤専従医師が1名以上
- 清潔かつ安全な設備であること
があればOKとされています。
ところが、実際にはお役所から色々と言われることがあります。
- 看護師の配置
- 患者の声などが漏れたりしないか
- 電子カルテルモニターの位置
というように。
このようにお役所から質問されたり、何かを求められたりすることを「行政指導」と呼びます。
それでは行政指導とは何か?
行政指導を簡単にいうと、役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように(又は行わないように)具体的に求める行為です。
例えば、この図面だと声が漏れそうなので、患者さんのプライバシー配慮のために構造を調整したりできませんか?というような感じですね。
患者さんのプライバシーに配慮するならば、もちろんこの行政指導に従って構造を変えるべきです。
ただ、行政指導は相手方の任意を前提としているものなので、「対応できない」と言って、行政指導に従わずに診察室の声が漏れてしまうような構造のままの図面のまま開設届出を持って行くことは可能ですが…
そして、無床診療所を個人で開設する場合はあくまで届出です。
届出というのは、届出書という紙を作り、その紙を保健所のカウンターに置いた瞬間に届出としての効力は生じますが…
もちろんあくまで理論上の話です。実務上はお役所と色々なやりとりをしながら進めていきます。
もし診療所 開設届出に明らかな問題があると…
診療所 開設届出を提出した以降は、お役所に監督権限が生じます。
そのため、診療所 開設届出に明らかな問題があると…
すぐに診療所に視察の方がやって来ます。
「医療法に基づく医療監視です」という感じで、医療監視員のバッジや名札を付けた人がぞろぞろと診療所にやって来て…
「医療法施行規則上、これは問題がある」ということで指導が行われることが容易に想像できますよね。
そして、診療所の評判などの観点から望ましくないでしょう。
診療所 開設届出において、問題はできるだけ無くすことが大切です。
診療所開設届について
1.開設にあたっての注意点
個人診療所開設にあたっては次のような点で注意が必要です。
①クリニック名称の制限
診療所、歯科診療所の名称は、広告の一環としてその使用が制限されています。
・診療科名として認められないもの(医療広告ガイドラインに規定)
(例) ○○インプラントセンター、 ○○アンチエイジングクリニック
・病院と紛らわしい名称
(例) ○○病院分院、○○中央外科、○○総合内科
・優位性、優秀性を示すような名称
(例) 理想的○○診療所、最強○○クリニック
・実態に反する名称
(例) 研究所の付属機関でないのに○○研究所付属○○診療所と付すこと。
②診療科名の制限
診療所、歯科診療所における広告可能事項及び標榜できる診療科名は、
医療広告ガイドラインによって決められています。
詳しくは医療広告ガイドラインをご覧ください。
(例)×呼吸器科、循環器科、消化器科
〇呼吸器内科、循環器内科、消化器内科
③クリニックの構造設備基準を満たすこと。
④管理者の医療法上の制約
・開設者が管理者であること
・管理者は、他の診療所等の管理者でないこと
・管理者は、臨床研修を修了し、臨床研修終了登録を済ませている者
診療所開設届 必要書類一覧 (一般的なケース)
以下いずれも正本、副本の2部は必須、必要に応じて行政書士事務所控え1部作成する。
1)開設管理医師の臨床研修修了登録証の写し、及び免許証の写し
★医師又は歯科医師免許証、臨床研修修了登録証は写しを添付、原本も持参する
2)履歴書
まだ、退職未了の職場がある場合、現職にこれから管理者として就任することに同意をもらうことが必要になります。
そのため、退職未了の職場がある場合は要注意。
3)勤務医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し
★勤務する医師も、免許証、登録証の写しを添付、原本を持参する可能性があるので事前に保健所に要確認
4)業務に従事する助産師または看護師等有資格者の免許証写し
助産師だけではなくて看護師等の他の医療従事者については、可能であれば免許証の写しを添付すること。
★「可能であれば」ということだが、要求されるかは事前に保健所に要確認
5)土地及び建物の登記簿(賃借する場合、賃貸借契約書の写しも)
※役所としては、土地建物登記事項証明書で所有者が誰かということを確認し、賃貸借契約書でちゃんとした所有者からちゃんと借りていることを確認したいと考えている。
◆注意点として
・必ず適正な金額が発生している契約であること
・又貸しの場合には流れが追えるように全ての契約書のコピーを添付すること
・身内に貸すために賃貸借契約が発生したような場合、賃貸借契約書は別途作ること
★お父様の物件を使って子供が診療所をオープンするという場合、賃貸借契約書を作らないケースが多いが、そういった場合でもその権限がちゃんとあるということを書類上知りたいということで、賃貸借契約書を作って欲しいと言われる
6)敷地の平面図
敷地全体の図面を添付する
7)敷地周囲の見取図
駅周辺の地図を添付する
※ Google Map (著作権上の問題があるが)のようなもの、住所を入れて全体の地図が判るようなもの、クリニック周辺の地図がわかるようなものを添付する
8)建物平面図
建物内部の図面を添付するということ
9)エックス線診療室放射線防護図
5ページ目にあるエックス線室の図面。これを添付するということ。
10)案内図
案内図は敷地の見取り図に近いもの。
診療所開設届記入上の注意点
・開設者の住所は診療所の住所ではなく自宅住所。
・開設年月日は提出日の前10日以内。
・診察日時は実際の診察時間を記入(受付時間ではない)。
・臨床研修終了登録年月日は医師免許登録年月日が平成16年4月1日以降の場合、
歯科医師免許登録年月日が平成18年4月1日以降の場合に記入。
・建物の構造概要は建物の登記事項証明書や賃貸契約書を見て記入。
診療所開設届の提出期限
診療所開設してから、10日以内に提出する必要がある。
その他注意点
立入を経てから副本交付となるケースが多く、翌月に保険診療開始を行いたい場合、前月の10日前後には立入を終えておかなければならないケースがあります。
とすると、前月の第1週の早い段階で診療所開設届を提出し、立入の日程調整をしなければ翌月の保険診療開始に間に合わない事態になりかねません。